前述したように、プロトコル スイートは、包括的なネットワーク通信サービスを提供することを目的として連携する一連のプロトコルです。 プロトコル スイートは、標準化団体から指定される場合や、ベンダーによって開発される場合があります。

IP、HTTP、および DHCP はすべて、Transmission Control Protocol/IP(TCP/IP)と呼ばれるインターネット プロトコル スイートの一部です。 TCP/IP プロトコル スイートは、オープン スタンダードです。つまり、これらのプロトコルは、誰もが無料で利用可能で、どのベンダーも、自社のハードウェアやソフトウェアに実装することができます。

標準ベースのプロトコルとは、ネットワーク業界によって支持され、標準化団体によって批准、つまり承認されたプロセスまたはプロトコルです。 プロトコルを各規格に沿って開発および実装すると、製造元が異なる製品どうしを正しく相互運用できます。 ところが、プロトコルに厳密に準拠していない製造元があると、その装置やソフトウェアは、他の製造元の製品と正しく通信できない可能性があります。

これをデータ通信に置き換えて考えてみてください。たとえば、会話の一方のエンドでは単方向通信を制御するプロトコルを使用し、もう一方のエンドでは双方向通信を規定するプロトコルを使用していると、データをやり取りできないことがほとんどでしょう。

プロトコルによっては独自仕様のものもあります。 ここでいう独自仕様とは、ある特定の企業やベンダーがプロトコルの定義と機能を管理しているという意味です。 独自仕様のプロトコルによっては、所有者の許可を得て別の組織が使用するものがあります。 また、その所有権を持つベンダーが製造した装置にのみ実装できるものもあります。 独自仕様のプロトコルの例としては、たとえば、AppleTalk や Novell NetWare があります。

複数の企業が共同で独自仕様のプロトコルを開発することもあります。 顧客のニーズを満たす独自仕様のプロトコルを開発したベンダー(またはベンダー グループ)が、後になって、その独自仕様のプロトコルのオープン スタンダード化を支援するのも珍しいことではありません。 たとえば、イーサネットは、元は 1970 年代にゼロックス社のパロアルト研究所(PARC)で働いていたボブ・メトカーフが開発したプロトコルです。 1979 年、ボブ・メトカーフは 3COM を創業し、Digital Equipment Corporation(DEC)社、インテル社、およびゼロックス社とともにイーサネットの「DIX」規格の推進に取り組みました。 1985 年、Institute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE; 米国電気電子学会)は、イーサネットとほぼ同じ IEEE 802.3 規格を発表しました。 現在、802.3 規格は、ローカルエリア ネットワーク(Local-Area Network; LAN)用の一般的な規格として使用されています。 もう 1 つ別の例を紹介します。ごく最近のことですが、シスコは、マルチベンダー ネットワークでプロトコルを使用したいというお客様のニーズに応えるべく、情報提供 RFC(informational RFC)として EIGRP ルーティング プロトコルを公開しました。