トランスポート層は、トランスポート要件が異なる複数の通信を分離し管理することができなければなりません。 たとえば、エンド デバイスでネットワークに接続しているユーザを考えてみましょう。 このユーザは、電子メールとインスタント メッセージの送受信、Web サイトの閲覧、および Voice over IP(VoIP)電話での通話を同時に行います。 これらのアプリケーションは、それぞれ信頼性要件が異なるにもかかわらず、ネットワークを通じて同時にデータを送受信します。 さらに、通話のデータが Web ブラウザに向けられることはありませんし、インスタント メッセージのテキストが電子メールに表示されることもありません。
信頼性に関して言えば、ユーザは電子メールや Web ページが完全に受信されたり、有用だと考えられる情報が漏れなく表示されたりすることを求めます。 電子メールや Web ページのロードがわずかに遅れても、最終結果が完全に正しく表示される限り、通常は許容できます。 この例では、ネットワークが欠けている情報の再送信や交換を管理し、すべてが受信されて正しく構成されるまで最終結果を表示しません。
それに対し、電話では、ときどき通話の小部分が欠けても許容可能と見なされることがあります。 いくつかの単語の小部分が欠落していたとしても、欠落した音声を会話の文脈から推測したり、相手に聞き返したりすることができるからです。 ネットワークが失われたセグメントを管理して再送信する場合に生じる遅延に比べれば、その方がましだと考えられます。 この例では、ネットワークではなくてユーザが、欠けている情報の再送信や交換を管理するわけです。
図に示すように、同時に発生し、それぞれ異なる要件を持つ会話を TCP や UDP が管理するためには、通信している種々のアプリケーションを TCP や UDP に基づくサービスが追跡しなければなりません。 それぞれのアプリケーションのセグメントとデータグラムを区別するために、TCP にも UDP にも、これらのアプリケーションを一意に識別できるヘッダー フィールドがあります。 一意の識別子となるのはポート番号です。